海自中東派遣の閣議決定について
こんにちは。いなばです。今回は結構真剣な記事です。
今回は2019年12月27日に閣議決定された「自衛隊の中東派遣」について思うところ
を述べたいと思います。
先に申し上げておくと、いなばは
個人的にはこの決定に大いに賛成しています。
しかし、この記事は個人的な意見を他人に無理強いするとか、
そういう目的で書いたものではありません。
なぜこの、国としての決定に賛成したのか、現在の我が国を取り巻く現状を解説しつつ意見を述べていきたいと思います。
① そもそも自衛隊の中東派遣とは?
政府によると、そもそもの趣旨としては
「中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に向け外交努力を続けるとともに、日本に
関係する船舶の安全を確保するのに必要な情報収集態勢を強化するため」
ということです。「武力介入」をしに行くわけではありません。
そもそも日本が「武力介入」をするメリットがあまりありませんからね、、。
中東、そして中東海域は石油の利権獲得争い、宗教上の対立、そしてソマリア海賊による攻撃の多発などを始め、諸般の事情で大変「治安が悪い」地域なわけです。
そのような危険な地域・海域で航行する日本船舶を守るための措置が今回の
「海上自衛隊中東派遣」というものになります。
そしたら「中東以外の安全な国から石油を輸入すればいいじゃない。」という意見が
当然出てくると思います。
しかし、やむにやまれぬ事情があり、中東からの輸入に頼らざるを得ないのです。
次の項目で解説します。
② なぜ中東なのか?
ご存じの通り日本は石油のほぼ全てを海外からの輸入に依存しています(国内では算出される場所はあるものの、ほとんど取れない)。
そしてそのほとんどは中東から輸送しています。
下の図を見ると、
最近はエネルギー使用量の増加とともに9割弱にまで増加しています。
「日本人の生活は中東からの原油輸送が担っている」と言っても過言ではないのです。
そしてさらに下の図を見てください。
これは、世界の「原油確認埋蔵量」をグラフにしたものです。
(データは少し古いですが。)
ここで言う「確認埋蔵量」とは、現在の技術を使って、現在の市場価格をベースにした場合に経済的に見合う方法で採取することができる埋蔵量のうち、高い確率で回収できる量のことを指します。
これを見ると、原油の資源埋蔵量が中東諸国に集中しているということがわかります。
データ上は世界でもっとも多く埋蔵しているのはベネズエラですが、サウジアラビアが2位で世界シェアの15.7%を占めています。以下、イラン(シェア9.3%)、イラク(シェア8.4%)、クウェート(シェア6.0%)、アラブ首長国連邦(シェア5.8%)と、中東産油国だけで世界全体の原油確認埋蔵量の約半分を占めるほどの多さとなっているのです。
さらに言うと、中東諸国には石油産出量と自国内での消費量を比較した際、輸出にまわすことのできる量の石油がある、つまり「輸出余力」があることです。
圧倒的な資源量、ということですね。
また、中東諸国の一部の産油国は、石油市場における需給と供給のバランスをとるために原油の生産量を抑え、生産能力を下回る量の生産を行うことで「余剰生産能力」をたくわえています。このような需給調整機能により、急な石油需要の高まりなど緊急時の供給に応えています。
さらに、中東諸国は、主要な産油国の中でも、日本を含むアジア諸国にとって距離が近く、輸送コストを抑えられるという特徴もあります。
こうした利点を考えれば、日本をはじめとする世界の資源輸入国は、中東など一部の資源輸出国に依存せざるを得ないというのが現状なのです。
③ そもそもなぜ原油は必要なのか?
原油はただ単に燃やせば暖かいだけの液体などでは断じてありません。
車や飛行機を動かす動力、ストーブの熱や工場の熱源、プラスチックやタイヤ、衣料品などの原料として、原油は私たちの生活の中で活躍する、無くてはならない大切な
エネルギー源となっています。
ぶっちゃけ、大体の日本人は原油の供給が止まると、たぶん死にます。
それほどまでに原油は私たちの生活と密接に関わっているワケです。
国会議員に「燃やせばあったかいだけでしょうがッ!」みたいな
トンチンカンな発言した方もいらっしゃるようですが、、(笑)
原油と石油の違いなどについてはここでは割愛します。
そして、その大事な原油は一体だれが、どのように日本に運んでいるのでしょか??
④ 原油は誰が運んでいるのか?
チマチマ運んでいると費用がかさむため、原油の輸送に必要なのは「大量輸送」です。
その条件をクリアするのが「船舶による輸送」です。
日本の外航船会社(日本郵船・商船三井・川崎汽船が大手三社)が日夜
VLCC(Very Large Crude Oil Career)というタイプの船で原油を中東から日本に運んできてくれています。
こんな形状の船舶です。港に行けば一度くらいは目にしたことがある方も
いらっしゃるかもしれません。かっちょいいですねぇ。
ちなみにこの原油を運ぶ船ですが、とても荷役(荷物の上げ下げ、つまり油を船内に入れたり、船外へ出したり)が難しく、運航に熟練度を要する船種だそうです。
運航にあたっているのは、主に船を操船したり自船の位置を特定したり荷役の監督をしたりする「航海士」や「甲板員」という方々と、船のエンジンの保守点検や新たに必要な部品を船内で溶接したりして作成する「機関士」や「機関員」という方々です。
航海士と機関士は船内で上のほうの立場にあり、甲板員や機関員は部下、という立場になります。
この辺はまた別の記事で紹介したいと思います。
そして当然このような原油輸送船が撃沈されてしまえば日本のエネルギー供給に
深刻なダメージとなります。
「輸送船が武装すりゃいいじゃーん!」という方がいらっしゃるかもしれませんが、
日本の船が自前で武装することは法律上不可能なうえ、
海外で現地の傭兵を雇えば高額なお金が請求されます。
そのため、丸腰で海賊などが多発する海域を航行する日本船舶も珍しくありません。
「そもそも海賊なんてほんとに出るのかよ?」って方はこちらの映画を
観てみてください。実際に襲われた船舶も存在します。
こうした背景もあり、現状最も日本~中東航路を航行する日本船舶を
”安全”に本来の業務に従事してもらう手段は「海外の海軍に頼る」か、
あるいは「海上自衛隊に頼る」ということになります。
当然ながら有事の際、海外の軍が日本の船を守ってくれるかなんてわかりません。
よって、
「海上自衛隊の中東派遣は最適解」
という風にワタシは考えたわけです。
「自衛隊に戦争をさせるのか!!!」と声高らかに叫ぶ方々が一定数
いますが、彼らには事の本質が見えていないとワタシは思っています。
彼らは丸腰の船員たちを危険地帯に
向かわせていることを知らず、
自分たちは安全圏から吠えるだけ吠えて、何不自由なく
暮らせる日常を当たり前のように享受しているワケです。
こんなのおかしいと思いませんか?
船員は文字通り命がけの仕事です。
中東なんかに行かなくったって危険な仕事なんです。
彼らはイラク戦争のときにだって遺書まで書いて原油を日本に運び続けたんです。
そんな彼らを「これ以上丸腰で危険海域を航行させないようにする」というのは
間違っていると、どれだけの方が思うでしょうか。
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